相続で、亡くなった父親が寄付をしていた場合
今日のヤフーニュースで、病院で亡くなった父親に3億円を寄付させたのは公序良俗に反し無効だとして、病院と主治医を相手に損害賠償請求したケースが紹介されていました。
遺族からすると、父親が相続人でもない病院に対し、3億もの寄付をするはずがない、病院がさせたのだろうと考えています。
病院の方は、正当な手続を経て寄付金を受け入れていると主張しています。
このようなケースは、例えば兄弟で相続する場合に、父親が、兄に財産を全部相続させるといった遺言書を作っていた場合にも生じます。
不利な立場の弟としては、そのような遺言書は兄が無理に書かせたのではないかと主張し、遺言が無効であるといった訴えを起こすことがあります。
遺言の場合でも、寄付の場合でも、その時点でお父様が正常な判断能力を持っていたかどうかがポイントになります。
生前に自分の意思で寄付したのであれば、寄付の相手方が病院であろうが、金額が大きかろうが、問題はありません。
しかし、寄付をした時点で認知症などによって正常な判断能力を欠いている状態だったということであれば、本人の正しい意思に基づく寄付ではなく、無効ということになります。
ニュースの事案でも、まさにそこが争われているようです。
加えて、このようなケースでは、そういった寄付をした動機があったかどうかについても争われると思います。
遺言書の場合でも同様で、そのような遺言書を残す動機があったかどうかはポイントになります。
一般的には、父親としては、遺族にお金を遺したいと考えるのが普通であり、他人である病院に対して多額の寄付というのは不自然であると考えることもできます。
しかし、本件では事情は分かりませんが、例えば病院が非常に手厚く面倒を見てくれたことに恩義を感じていた、財産全体の金額が非常に大きく、3億円の寄付をしても遺族に十分な相続分があるといったような事情があれば、3億円もの寄付をしてもおかしくないという動機があると考えることもできます。
したがって、①まずは寄付の手続が適正になされているか、②寄付の手続をした時点で本人の判断能力はどうだったか、③寄付をする動機はあったかといったポイントを中心に、総合的に判断されることになると思われます。
こういったニュースは最終的にどうなったかまでは報道されないことも多いですが、本件はどういう結論になるのか気になりますね。