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破産手続の基本的な流れについて(4)

前回からの続きとして、破産管財事件の流れをご紹介したいと思います。今回は、法人または個人事業者の管財事件についてご紹介します。

 

<法人または個人事業者の管財事件手続>

①通常、弁護士に依頼をすると、弁護士から各債権者へ破産準備に入った旨の通知を送付します。

しかし、現在営業中の会社の場合、取引の状況や、従業員の状況、資金繰りの状況等をお聞きして、直ちに営業を停止すべきではない場合もあるかと思います。

いつの時点で破産手続準備を公にするかについては、ケースごとに検討する必要があります。

 

②破産手続準備を公にする段階が来たら、各債権者に破産準備に入った旨を通知し、従業員の解雇手続なども行います。

会社の場合は、個人と異なり、公租公課も含めて全ての負債の支払を止めていただきます(個人事業主の場合は、公訴公課は原則として支払を継続していただく必要があります)。

 

③弁護士の下へ債権者から債権調査票が返送されてきます。

一般的に通知から約1ヵ月程度で返送されます。

なお、法人や個人事業主の破産の場合、管財人による財産の換価や未収金の回収などが急がれるケースもあります。そういった場合は、債権調査票が揃わない段階でも、とり急ぎ⑤⑥の申立手続を行う場合もあります。

 

④事業所が賃貸物件の場合、明渡手続を行います。

仮に、賃料を滞納していた場合でも、とり急ぎ明渡手続を行い、滞納賃料は賃貸人から破産債権として届出をしていただくことになります。

ただし、注意が必要なのは、事業所内の動産類の処分です。

動産類も財産なので、価値が残っているものを捨ててしまったり、相場よりも廉価で転売してしまった場合、裁判所から処分行為を否認されたり、毀損した財産価値の分を破産財団へ組入れ(入金)するよう指示されることもあります。

動産買取業者などに査定をしていただき、適正な価格で処分または買取りをお願いする必要があります。

 

⑤弁護士により申立書を作成します。

決算書2期分、預金通帳、保険証券、従業員の賃金台帳等、必要な資料も準備していただきます(この段階で初めて準備するというより、実際はご相談の当初から見せておいていただく必要があります)。

 

⑥裁判所へ申立書を提出します。

 

⑦裁判所により破産管財人候補者が選任され、候補者と調整の上、開始決定日が決まります。

破産管財人は、破産者の申立内容や財産を調査したり、換価・回収できるのにされていない財産があれば換価・回収を行い、配当が可能となれば配当手続を行う役割の方です。裁判所が弁護士の中から選任します。

申立を行う弁護士は破産者の側の弁護士ですが、破産管財人はいわば裁判所側の弁護士ということになります。

 

⑥破産者及び申立代理人が、破産管財人と面談します。

内容について聴き取りが行われたり、必要な資料の引継ぎを行います。

 

⑦破産管財人による財産調査、換価・回収手続などがなされます。

 

⑧裁判所で債権者集会が開かれ、破産管財人による報告がなされます。

通常、開始決定から約3ヵ月後に1回目の債権者集会が開かれます。

管財人の業務が少なく、配当手続も行われない場合は、1回目の債権者集会で手続が廃止されることもあります。

破産者が不動産を所有している場合は管財人が売却手続を行いますので、その場合は1回目の債権者集会で終わらない場合が多いです。

 

⑨管財人による財産調査等を経て、配当するだけの財産がないことが判明した場合、破産手続は廃止(終了)となります。

管財人による財産調査等により、配当するだけの財産が形成された場合は、各債権者に対し、債権額で按分(債権額が多い人には多く、少ない人には少ない、金額に比例した弁済方法)した配当が行われ、破産手続は終了します。