被告と被告人
今回は「被告」と「被告人」の区別について述べたいと思います。
いまだにニュースなどでもきちんと使い分けられていないことがあり、一般の方も混乱しやすいところですが、被告と被告人は意味が違います。
「被告」は民事事件で訴えられた人のことをいい、「被告人」は刑事事件で起訴された人のことをいいます。
民事事件は、私人同士でお金を貸したから返して欲しいとか、売買代金を払ってもらえないから支払ってもらいたいといったような場合に、裁判で訴えて判決を取得し、相手方の財産を差押えたりするものです。
民事事件の裁判において、訴える方を「原告」、訴えられる方を「被告」といいます。
刑事事件は、犯罪を犯した疑いのある人を、検察官が裁判所に起訴し、有罪か無罪かなどの判断を行うためのものです。刑事事件で訴えられた人を「被告人」といいます。
民事事件で訴えられた方が「被告」と呼ばれると、「私は悪いことはしていない」とおっしゃる方もいますが、民事事件の被告という言葉にそういった良い悪いの意味合いは特にありません。
刑事事件で訴えられた「被告人」のイメージがあり、訴えられる=悪いことをしたという印象から、なぜ自分が「被告」と呼ばれないといけないのかとおっしゃる方もおられますが、民事事件の場合は、単に「訴える方」「訴えられる方」といった程度の意味にすぎません。
なお、ニュースにおいて、刑事事件で起訴された人を「被告」と呼んでいることが多いのですが、これは新聞などの字数の関係で少しでも少ない字数で伝えるために「被告人」のことを「被告」と表記していると聞いたことがあります。しかし、上記のとおり、民事事件と刑事事件の区別を考えると、不正確な使い方ということになります。