訴訟における相手方主張の不当性について
訴訟案件の相談や打ち合わせの中で、時々お聞きするのが、相手方代理人が書面で明らかな嘘を書いている、こんなことが許されるのかという質問です。
結論から言うと、このようなことは訴訟ではよくあります。
代理人が作成する書面ですが、代理人が策を弄してそう書いているというより、本人がそのように主張しているケースがほとんどです。
代理人としては、事実関係は本人しか分かりませんから、本人に聴き取った上で、整理して書面に書きます。
法的な主張については専門家として構成を組み立てますが、前提となる事実関係は本人に聞くしかありません。
その上で、聴き取った事実関係に矛盾があったり、普通に考えておかしい内容の場合は、改めて本人にそれで間違っていないのか確認しますが、一般的にあり得る内容であれば、本人が言う以上、それを信用して書面を作成するのが普通です。
もっとも、そこで嘘をついてもいいのかというと、そういうことではありません。
双方で言い分が異なる原因は、一般論として、同じ事実を見ていても、立場が違うと見方が異なるし、解釈が違うこともあります。もちろん、勘違いをしているケースや思い込んでいるケースもあります。
こちらが相手方の主張を嘘と思っているように、相手方もこちらの主張を見て、同じように嘘だとかおかしいとか言っている可能性もあります。
さらに言えば、そのようにお互いに言い分が異なるからこそ、訴訟になっているものといえます。お互いが同じ認識の場合は、そもそも揉めることはありません。
訴訟は、お互いに言い分が異なる場合に、裁判官が関係証拠から判断して、どちらの言い分が合理的かを判断するものです。
したがって、最終的に判断するのは裁判官の仕事です。
そのため、相手方から出てきた主張の段階で、明らかな嘘じゃないか、こんな主張が許されるのかと言ってみても、結局それも含めて裁判所が判断することになるため、あまり意味がないのです。
もちろん、最終的に裁判所が下した判断が、社会通念とかけ離れたおかしなものである場合は問題です。
その場合は控訴などで是正する必要があります。