不動産賃貸借契約の連帯保証人と極度額の定め
今年4月1日から民法の債権法分野の改正が施行されます。
その中で、個人の根保証契約(将来にわたり特定の取引から発生する債権を包括的に保証する契約)については、極度額(保証する限度額)を定めなければならなくなりました。定めていない場合は、保証契約自体が無効となってしまいます。
不動産賃貸借契約で個人の連帯保証人をつける場合、まさに上記の趣旨が当てはまりますので、極度額を定める必要があります。
なお、連帯保証人が法人の場合(機関保証)は含まれませんので、極度額を定めていなくても大丈夫です。
定め方としては、例えば「極度額100万円の範囲で保証する」と具体的に金額を定める方法と、「本件賃貸借契約時の賃料の1年分の範囲で保証する」と極度額を決める基準を定める方法があります。連帯保証人にとって、最大いくらの範囲で保証債務を負わされるのか予測できることが重要です。
極度額の相場は契約時賃料の半年から1年分ぐらいと言われています。借主が賃料を滞納し始めて、催促し、それでも支払わず、訴訟提起をするなどした場合、半年から1年ぐらいかかるので、その間の滞納分を考えると、半年から1年分ぐらいが相当ではないかと言われています。あまりに過大な金額を定めると、そもそも連帯保証人のなり手がいなくなるほか、裁判所からも無効だと判断されてしまう可能性があります。
これから始まる制度なので、あくまで推測ですが、一般論として、2年分ぐらいまでなら無効にはならないだろうと言われています。逆に、賃料の5年分などと定めると、大きすぎるため無効と判断される可能性があります。
改正の趣旨として、もともと、主債務者が何年も滞納してから初めて連帯保証人が請求を受けて、いきなり多額の請求をされた場合に、もっと早く請求してもらえば早い段階で解消できた、こんなに多額の請求をされなくて済んだというようなケースで、請求を信義則上無効とした裁判例がありました。連帯保証人がどの程度の金額までなら債務を負うと予測できるかという予測可能性の問題です。連帯保証した以上無限に債務を負わされるのは不当という考え方です。そこから、根保証的な連帯保証人については、予測可能性を担保するために、極度額を定めておかないと無効という改正になりました。